ツバサ太郎の映画の感想チラシの裏

映画の感想を書いています。あくまで私ツバサ太郎の感想です。また、ネタバレを含むこともあります。

『イット・カムズ・アット・ナイト』に纏わりつく恐怖とメカニズム

どうも。ツバサ太郎です。

今回はイット・カムズ・アット・ナイトについての感想を書いていきます。

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紹介や解説ではなくあくまで「感想」なので、あんまりためになったりはしないかもしれないです。

また、ネタバレを含むことばかりになると思うので、鑑賞後に読んでもらえると嬉しいです。

 

まず『イット・カムズ・アット・ナイト』の簡単すぎるおさらいです。

舞台は疫病のような何かによって荒廃した地球。

主な登場人物は二つの家族。

父親の「ウィル」母親の「サラ」そして息子の「トラヴィス」による3人家族。

ウィルが家族にルールを敷き、行動を制限することによって家族を守るという選択を取っています。

そんな父にトラヴィスはやや不満そう、といった具合です。思春期なので当然ですね。

そしてもう一つの家族は開放的。愛し合ってお互いを尊重しあっている。

そんな家族があるきっかけで一緒に暮らすことになりました。

ライトノベルかよ!!!

となる気持ちも分かりますが違います。思春期の息子がいる家にもう一つの家族!?人妻はエロい!?!?なんてライトノベルありそうですけど。というか、もうここまで来たらエロ漫画ですね。もうエロ漫画でいいです。

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そして疫病から守るため、とお互いの家族が自己防衛の果てに破滅していく。といったストーリーです。

まあ詳しくは本編を観てください。

ところで皆さんは人生で一番怖かった時のことを覚えていますか?

と投げかけてもここはチラシの裏なので誰も答えてくれません。孤独は寂しい。

ちなみに僕は犬に追いかけられた時です。めっちゃ怖かった。

この映画で描いてる恐怖はおそらく人生最大になる可能性の高い恐怖について描いています。

ただ犬に追いかけられるとか、ピエロに追いかけられるとか、そういったものではありません。

確かに人や幽霊による物理的かつ可視化できる怖さは分かりやすいです。

 

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ほらね、怖いでしょ?

確かに怖い。

いや、怖いね。

怖い!!!!!!!!!!!!

でもこれより怖いことがあるんです。

それは「自分の想像が生み出す恐怖」です。

稲川淳二さんの「やだなぁ怖いなぁ」って言ってる時の方が、幽霊が出てきた時より怖いということと同じ理屈です。

ここからは映画の話です。

イット・カムズ・アット・ナイト』の「イット」はただ疫病のことを指していそうですが、疫病はあくまで現象や状況です。真の恐怖は現象が生み出した恐怖心が人を覆い、取りつかれること。

つまり「イット」とはまさしく「それ」という意味で、疑心暗鬼が生み出した「彼らが病気なら僕も病気だ」とか「病気っぽいから殺さなきゃ」とか、こういう事実かどうかは分からないけど暴走してしまう感情こそが「イット」なんだと勝手に思っています。

だからこそ、この映画では「疫病について」等の細かい部分の説明には重きを置いていません。

人を殺した父の姿。疑わずにはいられないもう一つの家族。犬の病気。開いてたドア。このような恐怖に結びつく要因だけを見せ続けられる。すると自分も病気になって、父に殺されるのではないかと想像してしまうのが息子のトラヴィスからしたらそこまで不自然なことではないです。

性のことなんかにも興味津々な若者にとって、死というものはより恐怖を加速させます。

そりゃ怖い夢もいっぱい見ます。

見えない部分を補う時には、事実以上に恐ろしいことを想像してしまう。そこを上手く利用して、最大級の恐怖を作る。

これこそがこの映画を吐くほど恐ろしいと感じさせるメカニズムです。

出来事としては「ドアが開いてただけ」で殺し合いが始まるなんて、恐怖に取りつかれた人間が想像することの恐ろしさを物語ってますね。

さらに、このメカニズムを観客である我々にも味わってもらうための仕組みが用意されていました。

それが説明放棄です。

鑑賞を始めてすぐに湧き上がる「毒ガスマスク?パパは感染?暗く電気を使えない家?」といった疑問に明確な答えを与えないことは、我々が劇中に起こっている出来事以上の状況を想像してしまう可能性のためなんだと思います。

だからこそ劇中の登場人物すら、この世界で起こっていることがなんなのかを知らないんです。

僕個人の話ですけど、幼い頃に地球温暖化によって海面上昇した末に沈んだ自分の住む街を想像した恐怖って未だに覚えてるんですよ。

僕は海面上昇なんてどんなものか知らなかったから、家の中が水でいっぱいになって死ぬ。それが温暖化。そう想像してました。

これこそが恐怖に支配された人間が作り出す想像の恐ろしさです。

無知は恐怖を生み出すということです。

女の子は無知ぐらいの方がかわいいかもしれませんね。

 

もう一つの家族の襲来

この出来事、というかこの家族は「移民のメタファーなのかな」と思いました。得体の知れない何かがもたらす「こいつ何すんのか分からん」というイメージは負の感情が沸いてる状況においては「こいつ絶対なんかやばいことしてる」という決めつけや偏見を生み出す、というのは移民に対して抱かれてるイメージと合うのではないでしょうか。

これもまた無知が生み出す恐怖の一つですね。

幽霊が怖い人は逆に幽霊を知ろう!!!!!!!!!!!!!!!!!!